カタカタ ボックス
生きもの観察紀行

7月26日 (4日目) (2004年 7月 ボルネオ島) タビン

6:30に目が覚めたが雨が降っていたのでうだうだしてやっと7:30ごろ外に出たら小雨になってました。少し上流にある滝の方に向かって木道を歩いていると、ムナジロムジチメドリがピョンピョン跳ねながら虫か何かを探してチョコチョコしてました。雨上がりで何か虫が落ちていたのかな?

ムナジロムジチメドリ 同じ鳥

木道の右手の草むらからツノガエルかな?と思うようなかすかな声が聞こえましたが、とてもではないが入り込めるような場所ではなかったので、あきらめました。
川沿いの白い小さな実のなるイチジクにヒヨドリの仲間が来ていたし、オレンジハナドリもうろうろしてました。山に向かって少し階段を上ると、ブタオザルの群れが森の中をがさがさと移動して来ました。雨は8:00ごろには止みました。

食堂に戻って朝食を食べ、まったりしながら紅茶を飲んでいると、志保ちゃんが床の上に大きなヘビがいるのを見つけました。4.5mくらいはありそうす。まず双眼鏡で顔を確認してからビデオを撮ろうと思っていたら、こちらの気配に反応したのかするすると床下に逃げてしまいました。こういうとき千石先生(←動物奇想天外とかに出てる人)ならすかさず駆け寄ってつかむんだろーなー、この辺りにはバイパーとコブラ以外に毒のあるやつは居なかったよな、とか思いながらも、素人がうかつに手を出すとろくなことはないので見送りました。このヘビですが、従業員に後から聞いたところ、床下に巣くっていて、追い出しても帰ってくるそうです。アオダイショウみたいに家に居ついてるみたいですね。もう一回見られるかな、とか思ったんですが、これっきりでした。

パイソン(アミメニシキヘビ

この日は月曜日。田仲さんは仕事なので、午前中は我々3人とMCさんで行動です。9時30分に出発してリパ洞に行くはずだったんですが、いつまで待ってもMCさんが来ない。おかしいなと思いながら周辺で鳥などを見たりしてましたが、他の従業員が彼はミーティングに出ているので遅れると教えてくれました。客を待たせてミーティングかよ!と思ったし、第一スウェーデン人以外に客はおらず、今日、彼らが帰ったらその後の客の予定は無いとか言っていたのに、何を急いでミーティングする必要があったんだかさっぱりわからない。待っていても全然現れないので、敷地出口に向かって少しずつ歩くことにしました。ウマオスンダリスらしきリスを見たが、よくわかりませんでした。

歩いていると、上空にスンダエンビコウが現れました。大きく旋回を続けています。光線の具合が悪くほとんど色はわからなかったんですが、顔の黄色がかろうじて見て取れました。去年、ここに宿泊した時には橋の近くに現れたらしいんですが見損ねたので、ラッキーでした。

ウマオスンダリス? エンビコウ

エンビコウを見ていたら10:20ごろMCさんがトラックで現れました。当然、"I'm sorry."は有りません。昨日、人をルーズ呼ばわりしといてこれです。まあ、これでこそマレーシア人です。
引き続き双眼鏡で上空のエンビコウを見ていたらガシャンッ、と音が聞こえました。なんと私のフィールドスコープを取り付けていた三脚が倒れてしまってました。軽さ重視で不安定なビデオ三脚を使っているので、たまに倒れることがあるのですが、また倒れたくらいの気持ちで持ち上げたら「カラカラ」と音がします。うわー、やっちまったとレンズ越しに中をのぞくとプリズムが取れてしまっていました。まだ買って1年なのに、コーワのスコープはプラスチック部品を使って軽量化を図っているので、耐久性に問題があるようです。そう言うと、他の二人からは倒したら壊れるのは当たり前だと諭されてしまいましたが・・・。でも弱すぎだろう!フィールドで使うものなのにー、買って一年なのにー、まだまだ今からいろいろ観察しなければいけないのにこれでは困るー!とひとしきり文句を言って、とりあえずは後でばらして応急処置できるかどうか検討することにして、トラックでリパ洞へ向かいました。

リパ洞までの道は途中まで車で行けますが、小川にかかっている橋が落ちているので、そこからは延々歩きです。まあまあの天気の中、上空に現れる猛禽を見たり、道を横切って森から森へ移動する小鳥を見たりしながらぼちぼちと進みました。時折、チャイロカッコウハヤブサやウォーレスクマタカ?、九官鳥のペアが上空を横切りました。九官鳥は大体ペアで行動しています。私は九官鳥ラブなので大喜びです。遠くの方からセイラン(でかい孔雀っぽい地上性の鳥です)の声が聞こえました。

「痛いー!」と声がするので見ると、志保ちゃんが歩いている途中でアリの巣を踏み抜いてしまってました。足を這い上がってきたアリに噛まれてすごく痛がっています。このように、熱帯雨林はアリの数も種類も豊富なので、フィールドでは注意しなければいけません。例えば、写真家や研究者が木に登るときなどには、やはり樹上性のアリの巣に注意しないとひどい目に遭うそうです。とにかくボルネオでは行動中は動作は慎重に、周りに気を配りながら動かないと、何がいるかわからないです。まあ、日本でもスタスタ歩いてたらマムシを踏みそうになったりするんだから、フィールドを歩く上でのお約束ですね。

大分歩いてくたびれたころ、森の中を通るリパ川へ降りるトレイルの入り口に着きました。森の中は湿っぽくて、当然タイガーリーチ(でかいヒル)が道端の葉の上でうごうごしていたりします。
森の中の細い流れの近くでよく見かけるエンビシキチョウが居て、「ヒーーッ、ヒーーッ」と甲高い金属的な声で鳴いていました。どことなくセキレイに似た姿と声の鳥です。ちなみにエンビとは燕尾のことです。二股に分かれた特徴的な尾をしています。

リパ川岸に下りると、スウェーデン人の一団がいました。リパ滝に行ってきた帰りのようで、泳いだのか水着でした。熱帯とかで気安く淡水で泳ぐもんではないと思うんですが、この辺りは上流に民家も無いので、まあ比較的安全なのでしょう、多分。川は増水していて、かろうじて水面に顔を出している川中の岩を使って川を横断しましたが、ズボンが若干濡れてしまいました。
我々は滝に興味は無いので、下流にあるリパ洞に川岸の岩場を伝って向かいます。岩場は滑りやすく、リパ洞の入り口に行くには2mくらいの岩肌を木の根を利用して登ることになります。リパ洞までは足場が悪いし、そういうちょい危険行為に慣れてない人は諦めた方がいいです。

このリパ洞ですが、洞窟というよりは岩場が川面に張り出して下に空間がある、といった感じの穴です。奥行きは10mもないですが、前年の7月に来た時にはシロハラアナツバメがたくさん営巣していてにぎやかでした。その時にはオオアナツバメらしいものもいたんですが、これは判別に自信が有りません。
今年もツバメを見るつもりで来たんですが、どうしたことか今回は1羽も居らず、静かなものでした。営巣が終わってしまったのか、毎年するわけではないのか、よくわかりません。残念でした。このリパ洞ですが一応、コウモリが数種確認されているらしいんですが、洞の下は川なのでボートがないと奥には入れません。結局、リパ洞を見たよ、で終わってしまいました。
ここの川原では石の間にグレーの1.5cmくらいのヒキガエルの仲間らしいカエルをちらほら見かけるんですが、図鑑を見ても正体がよくわかりません。なんだろう。

さて、リパ洞を見たので帰途に就きました。だいぶん暑くなった中をテクテクと歩き、適当に現れる小鳥などを見ながら、MCさんと雑談をしました。野鳥の肉は固いのでスープだけ飲むのがうまいとか、私の長靴はマレーシアリンギットでいくらだ?とか、私のビデオはいくらだったのか?とか、飴をあげたらこれは1個いくらぐらいだ?とか。本当にマレーシア人は物の値段を聞くのが好きです。別に聞いてどうということもないんですが、聞きたいらしいです。ちなみにマレーシアでは長靴はRM8くらい(250円くらい)だそうです。これは後で参考になるろくでもない出来事が起こったんですが、その話は後ほど。他にも鳥インフルエンザの話とか、神戸牛は高いんだってねー、とかとりとめもなくいろいろなことを話しました。
この道では道端の木に花が咲いていて、オオコノハドリやベニタイヨウチョウ、ルリコノハドリなど小鳥を結構見ることができました。この経験から、後日、ここで鳥の標識調査を実施することとなったんですが、その話も後です。ムナフコウライウグイスのメスなども見ました。

ロッジに帰る前に田仲さんの職場に寄り、朝から標識調査(バンディング)のために網を張った成果を見せてもらいました。網は3日間継続して森の中の同じ場所に張られ、朝から晩まで定期的に見回りをして、調査が行われます。
鳥のバンディングとはどういうことをするのか。まず、調べたい地点で網を張るなどして鳥を捕獲します。捕獲した鳥には個別に足環(アルミなどの金属製の足環で個別の記号と番号が振ってあります)を取り付けます。後でこの鳥がどこかで再捕獲されたり死体が回収された時に、この番号が役に立ちます。
その後、捕獲された鳥の種類、全長や足、くちばしなどの各部分の長さ、体重などの測定値、年齢(成鳥とか亜成鳥とか幼鳥とか)や雌雄の別、繁殖期であるかどうかなどを体の状態を調べてできうる限り確認し、記録します。
このバンディングを行うと、どういう役に立つのか。思いつくものを下に挙げてみます。
  • その時期、その環境を、どういう鳥が利用しているのかがわかる(種類、年齢的な情報、繁殖期かどうかなど)。
  • 各測定データを収集することで、平均的なその鳥の体の数値がわかり、また、鳥の雌雄、年齢、生息地によって数値が違ってくるかどうかなどがわかる。
  • 鳥の渡りや地域間の移動などを、機会があれば、バンディングした鳥の動きによって確認することができる(再捕獲、死体の回収などが必要)。バンディングを継続してやっていないと、足環を着けただけになってしまいます。
  • 記録、確認したデータは後の保護・保全の根拠データとなる。
マレーシアでは生息する生物のいろいろな情報がまだまだ十分でなく、環境の保全を行い、生物を保護するためにも、その根拠となる科学的なデータが必要であるということで、田仲さんをはじめ多くの日本の研究者さんたちが海外協力の一環として現地で調査活動をされています。今回はそのような調査活動のうち、田仲さんが青年海外協力隊の隊員として行っているタビンでの鳥類標識調査を見学させていただきました。この調査は野生生物局の公式の調査であり、調査で得られたデータは公式のデータとなります。ということで、見学の合い間にたくさん写真を撮らせてもらったのですが、そうした公の調査に伴うものであり、個人が好き勝手に公開していいものでもないかなと思うので、一部をこの旅行記で紹介させてもらうに留め、生きもの図鑑に使うのは控えました。確認した鳥種については、野生生物局の調査であることを明記すれば、特に問題はないということだったので、ある程度書かせてもらうことにしました。

それで、その日の朝の成果ですが、ミツユビカワセミ、ムナフクモカリドリ、ホオアカコバシタイヨウチョウが捕獲されていました。ミツユビカワセミの羽根は紫がかった光沢があって、すごくきれいでした。足環はすでに着けられ、計測も終わっていたので、じっくり観察させてもらった後、放鳥されました。

ミツユビカワセミ ムナフクモカリドリ
ミツユビカワセミ背中と尾 ホオアカコバシタイヨウチョウ

さて、昼食だということでロッジに帰って食堂まで歩いていると、カササギサイチョウが飛んで来て、道端の木の枝に止まりました。しばらくそこに留まって枝をガジガジかじったり、結構いろんな仕種を見せてくれ、最後には足で頭を掻こうとして枝から落ちるなど、楽しませてくれました。

カササギサイチョウ

昼食後、また田仲さんの所に行って、標識調査を見学しながら、適当に事務所周りで鳥見をしました。合い間にフィールドスコープをばらして故障箇所を確認しようとしましたが、長めの精密ドライバーが無いとネジが外せそうになかったので、ロッジに帰ってMCさんに相談することにしました。

昼過ぎから夕方までは暑いので、鳥はあまり活発ではありません。事務所の横には池があり、スターフルーツの木があるんですが、そこらをうろうろするアカガオサイホウチョウを見たり、スターフルーツの実をかじったり、シキチョウやルリノドハチクイを見たりとのんびり過ごしました。
そして、16:00前ごろから周囲の林で鳥が動きだしたので観察を再開。アオミミゴシキドリ、ヒメカレハゲラ、クビワヒロハシなどを見ていると近くで九官鳥の声がし始めました。事務所敷地内に高さ10mくらいの枯木が立ってるんですが、そこに九官鳥のペアがやって来てピヨン、ピヨンと高く柔らかく、よく通る声で鳴いていています。双眼鏡で確認すると近くにブッポウソウもいました。そのうち九官鳥が移動して、うまいことブッポウソウと並んだので、ビデオに撮りました。左にブッポウソウ、右に九官鳥です。九官鳥はブッポウソウに興味を示していましたが、ブッポウソウは完全無視でした。

ブッポウソウと九官鳥

九官鳥の声は2003年に来た時に夕方、近くの橋でよく聞いていたんですが、方向から考えるとちょうどこの辺りから聞こえていたのだろうと思います。ここはねぐら入り前に必ず寄る所のようです。夕方16時ごろからここで待っていれば、野生の九官鳥が見られる確率は高いと思います。

この日の午後の調査ですが、あまり鳥は捕獲されなかったと思います(記憶があやふや)。日が暮れたので、ロッジに夕食を食べに帰りました。

(この辺、記憶があやふやで、この日に最後のナイトドライブをやったと思ってそう書いてたんですが、たぶん次の日だったと思うので、一部、書き直しました。)

食事の後、もう一回網を確認するという田仲さんに付いて野生生物局まで戻り、何もかかっていないのを確認した後、敷地内のモスク周りで明かりに寄って来たヤモリや何となくゴキブリっぽく見える白いカマキリ、ビワハゴロモなどを観察して楽しみました。

カマキリ ビワハゴロモ(6cmくらい)

罰当たりにもモスクの周りで楽しんだ後、3人でロッジに引き返したんですが、私は一人離れてロッジ横の川にカエルを探しに行きました。鳴き声をたよりに探すと、川の中の岩の上にカエルを見つけました。後で調べるとPoisonous Rock Frogでした。どうにか捕獲できないかと思ったのですが、雨が降ったせいで水量が若干多い、しかもちょっと足を踏み入れたら、なんと長靴の中に水が染みて来てしまいました。どうやら小さな孔が開いてしまったようです。孔を探したのですが見つからないので、もういいやとこの日は帰って寝ることにしました。この日は夜半から大雨が降り始めました。

Poisonous Rock Frog

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