カタカタ ボックス

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■2006.11.30(木) 狂犬病の話その3 犬に咬まれたらどうするか?

続きです。

犬に咬まれたらどうすればいいのか? って話をちょっと書いてみました。私は専門家ではないので、間違ってたり落ちがあったりするかもしれません。予めご了承を。

措置としてはまずは傷口をよく洗う。狂犬病ウイルスはアルカリに弱いそうなので、石鹸を使ってよく洗っておくといいです。しかし、綺麗な水が無い場所ではそうもいきません。山に行くにしても何にしても、茶とか持ち歩いておくと便利です。余談。んで、医者に行って消毒した後、破傷風トキソイドと多分、抗生物質、そして狂犬病の恐れがあれば狂犬病ワクチンの第1回目、必要であれば抗狂犬病免疫グロブリンを注射してもらう事になります。

ここで重要なのが、自分はどういう素性の犬に咬まれたのか? これをできれば明確にしておきたいです。一番いいのは咬んだ犬を確保しておくこと(まあ危ないから無茶はしちゃだめですが)。その犬が狂犬病だったのか、そうでないのか? それがわかればフルコースで6回のワクチン接種を全部受けないといけないか、途中で止めていいかどうかを決められます。犬が確保できていれば、抑留しておいて経過を観察するか(1週間くらい?)、殺して脳のウイルス検査をできます。相手は野良犬で咬んだ後さっさと逃げちゃってたら? そこが狂犬病流行国ならワクチン接種はフルコースです。
犬は飼い犬だったのか? 野良犬だったのか? 何らかの異常行動が見られたか? 単に怒らして咬まれただけか? 押さえておきたいポイントです。

んで、ざっとこんな感じかなと思うあれこれ。

○国内
現在、国内に狂犬病は存在しないのでよっぽど異常な行動を取る犬とか、北海道の港近くでロシア人が国から連れてきた犬に咬まれたとかしない限り、まず心配する必要は無いと思います。狂犬病予防法とか関連法令、条例であれこれ措置があると思うんで、ご近所トラブルで内々に済ませるのでなければ、各自治体の保健所とか動物管理センターに相談すればいいと思います。

・飼い犬が相手
狂犬病の予防接種を毎年受けている犬ならオッケー。通常の治療(破傷風ワクチンと抗生物質)となります。予防接種を受けてなかったら? 多分、大丈夫なんだろうけど、役所に相談したら自治体の動物管理センターや獣医に犬の経過観察をしてもらう事になります。ワクチン接種はたぶんやらないで済むと思いますが、本人の希望や自治体の方針とかもあると思います。

・野良犬が相手
犬が確保できていれば動物管理センターなどで経過観察でしょうが、「今のところ日本には狂犬病は発生してないので大丈夫だと思いますよ」とか言われて通常の治療じゃないかなと思います。日本国内だと下手に相手が飼い犬の方が手続き的に面倒かもです。

・ロシア人とかの持ち込み犬が相手(笑)
厚生労働省に参考になるページ(下)がありました。犬を抑留して経過観察するけど、同時進行でワクチン接種も勧められそうです。これもまず保健所とかに相談ですね。

  →我が国に不法に持ち込まれる犬の対策等の徹底についてとか関係法規集等のページ(厚生労働省)

○国外
狂犬病流行国かどうかをまず確認。犬の様子はどうだったかも確認。やばそうなら、現地をよく知っている人に相談してすぐに病院に連れてってもらってワクチンとか破傷風トキソイド、免疫グロブリンなどの必要な措置を受けるか、在外公館に連絡して相談し、いい病院を紹介してもらうか、とっとと出国していい医療機関のある国に行くなり日本に帰るなりして1回目のワクチン接種を受ける事。とにかく迅速に最初の措置を受ける必要があります。狂犬病の曝露後ワクチン接種は0日目、つまりその日から始めるのが普通なのでもたもたしてちゃダメです。ただ、国外では副反応の強いワクチンを使っている国があるし、医療水準の低い国では注射を受けたらかえって他の感染症が怖い事もあるんで、必ずその国で措置を受けるべきとは思いません。在外公館など相談できる連絡先は予めメモして持ち歩いておくのがよいです。もし、日本に帰って措置を受ける場合は、空港ですぐに検疫所の人に相談する事。下手に田舎に帰ったらすぐにワクチンを受けられる病院が無い可能性があるから。あと、日本では免疫グロブリン製剤は手に入らないみたいなので、ガブガブ咬まれてひどい怪我を負ったとか顔とか肩とかを咬まれたとか言う様な人は帰国するより現地で措置を受けた方がいいと思います。
それと、受傷後のワクチン接種はフルコースで6回なんで、大概の人は残り回数を日本で受ける事になると思います。途中で帰って来た人も、検疫所の人に空港で予め、どこの病院に行けばいいかとか相談しておいた方がいいです。あと、現地でどんなワクチンを接種されたのか、空き瓶をもらうなり、ビンに書いてある情報をメモしておくなりした方がいいです。それをワクチン接種する日本の医者に見せてください。

まあ、以上の様な感じです。


■2006.11.25(土) 狂犬病の話その2 とついでに韓国の鳥インフルエンザの話

狂犬病の話 その2

さて、昨日に続き狂犬病ウイルスの話です。ラブドウイルス科のリッサウイルス属のRNAウイルスで遺伝子型がいくつかあります。犬やキツネなどの狂犬病の原因となっている狂犬病ウイルス以外に、コウモリ由来の狂犬病の原因となっているコウモリリッサウイルスの仲間がいくつか、アフリカでトガリネズミから分離されたモコラウイルスがあり、現在使われている狂犬病ワクチンではモコラウイルス以外は予防効果が期待できる様です。

感染はウイルスを排出している動物に咬まれるなどして起こります。傷口から入ったウイルスは末梢神経に入り、増殖しつつ神経、脊髄を伝って脳に向います。ウイルスが脳に到達するまでの経過はゆっくりですが、脳に到達したら一気に増殖しここで発症となります。発症しちゃったらジ・エンド、助かりません。この様に、狂犬病の潜伏期間とはウイルスが脳に到達するまでの時間です。数日から数ヶ月と幅がありますが、これは受傷した場所が脳に近いかどうか、傷の大きさなどによる体に入ったウイルス量などで変わって来ます。

んでおもしろいのが、通常の病気は感染する前にワクチン接種を受けるのが当たり前なんですが、狂犬病については潜伏期間が長いので、感染した後でワクチン接種を受けても発症を防ぐ事ができます。ウイルスが脳に到達する前にワクチン接種で自前の抗体を作ってウイルスを攻撃してしまえばいいって事です。しかし、これは自前の抗体ができるのが先か、脳にウイルスがゴールするのが先か、ってな事で結構怖いレースです。特に、顔など脳に近い場所を咬まれたり、顔や指先など神経がたくさん通っている場所を咬まれたり、複数個所を咬まれたり、傷が大きかったりした場合、ワクチン接種による抗体産生が間に合わない可能性が出てきます。えーっ、それじゃ死ぬかもしれないじゃん!って事で、ここで抗狂犬病免疫グロブリンが登場します。

抗狂犬病免疫グロブリンってのは動物やヒトの狂犬病に対する抗体を集めたものです。つまり、さっさと出来合いの抗体を体に入れてウイルスを叩いちゃおうという作戦です。WHOなどの推奨する治療法にはこの抗狂犬病免疫グロブリンの注射が含まれていて、受傷部位にこれを注射しろとなっています。しかーし、ここで一つ問題が。現在、日本ではこの抗狂犬病免疫グロブリン製剤が承認されてません。ほぼ入手困難ということです。そうすると、狂犬病である事が確実な動物にやばい咬まれ方をした人はこのグロブリン製剤を射ってもらわないとかなり危ないんですが、日本に帰って来ちゃったらこの治療は受けられない事になります。んじゃどうすりゃいいの? となるとしょうがないので現地の医療機関で射ってもらうって事になるんですが、まあ現地と言っても医療水準はいろいろなんで悩ましいところです。それと、受傷後の狂犬病のワクチン接種は0,3,7,14,30,90日後と6回も受けないといけないんですが、国によっては副反応の強いワクチンを使ってたりするんで、そっちで病気になっちゃっても嬉しくない。んじゃどうすりゃいいの?っとなると、うーん、やっぱ在外公館の医官なんかに相談してその場所でのベストを教えてもらうのがいいんじゃないかなー。「実際にあんたが咬まれたらどうする?」ってな聞き方で聞いてみりゃいいんじゃないですかね。多分、金持ち外国人御用達の病院なぞ紹介してくれるんじゃないでしょうか。 そんな金持ち外国人御用達の病院なんぞない場所を旅行してる場合は?っと来たら、そりゃそこでのベストで我慢するしかありません。しかしなかなかリスキーなんで僻地の狂犬病流行地を放浪する人なんかは、旅行前にちゃんとワクチン接種を受けて抗体を作っとく方がいいと思います。ちなみに、事前にワクチン接種をしてる人も、咬まれた場合はまた追加のワクチン接種が必要となるんでご注意を。

ま、ほとんどの短期旅行者は狂犬病ワクチンの予防接種なんて受けとく必要は無いです。あれって1回が7000円超と高い上に、最初の接種、1ヶ月後に2回目、6ヶ月後に3回目、あとは犬と一緒で毎年1回接種、とものすごく金がかかるのでそれなりのリスクがある人のみが受けるのが現実的です。コウモリいじったり他の哺乳類にちょっかい出したりする人は受けておいた方がいいかもしれませんね。


参考
リッサウイルス感染症(国立感染症研究所感染症情報センター)

狂犬病(国立感染症研究所感染症情報センター)

CDC Contact Information for Rabies Questions(CDC)



韓国の鳥インフルエンザの話

韓国の鶏の大量死はやはり、高病原性鳥インフルエンザH5N1だった様ですね。
韓国の鶏大量死、高病原性鳥インフルと確認 23万羽処分へ (2006/11/25:Sankei Web)
韓国の農林省は25日、全羅北道益山市の養鶏場で死んだ鶏約6000羽について精密検査を行った結果、毒性の強い高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)によるものと確認したと発表した。これを受けて韓国政府は、同養鶏場の半径500メートル以内にある6カ所の養鶏場にいる鶏やアヒルなど23万6000羽をすべて処分する方針だ。

これはちょっとまずい話です。なぜか? 新型インフルエンザが発生しちゃうから? 違います。このH5N1ウイルス、確かに東南アジアなど、現在ならばインドネシアでぽつぽつと人の患者が発生しちゃってるんですが、問題はそれよりも養鶏業への深刻な打撃です。今のところH5N1発生国でのヒト患者の発生状況を見る限り、感染した鶏をさばく、死んだ鶏を食べる、身近に鶏を飼っていてそれに病気が発生した、などかなり濃厚な感染鶏との接触が無いと感染しないものと思われます。つまり、ウイルスが今のままの鳥型でヒト型に変異しなければ、通常の日本人にはあまり関係がない病気なのです。しかし、このウイルスが日本に入って来たらどうなるか? 日本国内の養鶏業者はパニックになります。2003年12月末に山口県の養鶏場で発生したH5N1による鶏の大量死から始まった一連の騒動を思い出してみましょう。京都府では発生養鶏業者に自殺者まで出ましたよね。そしてあの後、危機感を覚えた業者が発生リスクの回避のために闇ワクチンを使用した事から発生したのではないかと疑われる低病原性インフルエンザH5N2の発生が2005年に茨城県の養鶏場で起こったりしています。

んで、今回のニュースを聞き、これらを思い出してすぐに頭に浮かんだのが、そもそも2003年末に山口県の養鶏場でH5N1が発生する前に、韓国の養鶏場ではすでに、H5N1による鶏の大量死が起こっていたという事実です。山口県で突如起こったH5N1、私はあれは多分、朝鮮半島から渡って来たなり風で流されて来た鳥が運んで来たのではないかと思っています(遺伝子的に近い株でしたし)。ということは、今回もまた前回と同じ冬季であり、こりゃ日本にも来る可能性が高いかもしれないなと思ったりしてます。そんな事になれば、日本の養鶏業界はまたまた大パニックですねー。大変だ。

さて、ここで前回のH5N1の発生を時系列で列挙してみます。参考にどうぞ。詳細はこちらなどを参考にしてください

ProMEDに掲載されたトリインフルエンザ(Useful INOUE Home page)
韓国の話。ProMEDは英語です。

鳥インフルエンザに関する情報(農林水産省)
国内の話

2003年
○韓国 2003年12月5日〜11日、ソウル近郊の養鶏場で19000羽が死亡。これを皮切りに産経の記事にある様に被害が出ました。


○山口県 2003年12月28日に阿武郡阿東町の養鶏場で鶏の大量死。


2004年
○大分県 2004年2月14日〜15日、玖珠郡九重町の一般家庭飼育のチャボ7羽が死亡。


○京都府 2004年2月中旬、船井郡丹波町の養鶏場で鶏の大量死発生(1件目)。


○京都府 2004年3月3日、船井郡丹波町の養鶏場で鶏死亡(2件目)。


○京都府 2004年3月5日から4月2日まで、周辺でH5N1で死亡したカラスがぽつぽつ確認された。


○兵庫県 2004年2月25、26日、多可郡八千代町の食鳥処理場へ京都府の丹波町の1件目の農場からH5N1を持っている鶏が搬入された。処理場で一緒にされていた岡山県産の鶏にも感染しちゃった。


○香川県 2004年2月25、26日、県内の化製場へ、兵庫県の上記の食鳥処理場から内臓,羽毛などの処理残渣が搬入され、後日、ウイルスが確認された。


○大阪府 2004年3月5日、 3月17日に京都府の丹波町近くの自治体でH5N1で死亡したカラスが発見された。


○茨城県 2005年4月頃、水海道市の採卵鶏飼養農場で鶏の産卵率の低下や死亡数の増加が見られ、調べてみたらH5N2だった。あちこちで発生したけど、そもそもどっからそのウイルスが来たのか? 遺伝子解析の結果からすると外国産の闇ワクチン由来くさかった話です。


参考:高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム検討会(農林水産省)

こんな感じでした。発生件数はそんなに多くないわけですが、対策が大変だったのは記憶にありますよね。多分、今度起こっても感染隠しはまず無いだろうと思いますし、各方面が対応策を準備してるだろうからそうそう発生が拡大することは無いと思いますが、やっぱ関係者は戦々恐々だと思います。

そうそう、前回の鳥インフルエンザ流行の後、韓国や日本の京都では関係者のH5N1に対する抗体保有状況が調査されました。その結果、韓国で4人、京都の養鶏場の従業員4人が抗体を持っていたそうです。彼らは当時、発症していませんが、感染は起こっていた様です。あれだけ関係者が居て、特に発生農場については防御措置も取らずに鶏を扱っていた人が居たにも関わらず発症した人は一人も居なかった事から、とりあえず鳥型であれば当分は人間については恐れる必要は無いんじゃないかなーと私は楽観視しちゃってます。でも産業としての養鶏には大打撃になるのは確実なんで、日本に入って来ない様にお祈りしておきましょう。


参考
京都府鳥インフルエンザ発生対応の防疫作業従事者における血清抗体検査結果について(2004/12/22:厚生労働省)

あと、何で鶏にさっさとH5N1のワクチンを打たないの?って話はこちらをどうぞ。
鳥インフルエンザのワクチンによる防疫と清浄化(動物衛生研究所)
鶏にワクチンを打ってもウイルスを根絶できない。下手に抗体を持った鶏になると発症しないのにウイルスは持っているという非常にやっかいな状況になりかねないので、いまのところH5N1ウイルスが居ない日本では、発生農場の鶏を処分する方法で国内のウイルスを根絶する方向でやる方がいいって話です。どこにでもH5N1が居るんで、なんて状況になったらワクチンが解禁になるでしょう、多分。なんか中国ではワクチン使ってるので元気なのにH5N1ウイルス持ってる鶏やアヒルが市場に居るとの話です。他国にそんなのが持ち出されたら(持ち出されてる可能性大)その国の鶏やアヒルは抗体を持ってないのでかなりやばいと思います。

現在、世界で進行中の鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ対策などについてはこちらのサイトがごっつー、参考になります。
鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集
とにかくすごいページです。「海外報道意訳集」は毎日要チェックです。


■2006.11.24(金) 狂犬病の話 その1
お久しぶりですー。寒くなりましたねー。すっかりインドア人間になり果ててます。いやはや。

狂犬病の患者が2名発生したということで、ざらっと書いてみたんでアップします。まあ、興味があったら読んでみてください。


狂犬病の話 その1

国内で狂犬病の患者が立て続けに2名も確認されました。いずれも8月にフィリピンで犬に咬まれ、帰国後に発症したという事です。病気が確認されたのは一人は11月16日で京都市の男性、一人は11月22日で横浜市の男性です。


1例目
36年ぶり狂犬病発症、京都の男性が比でかまれ重体(2006/11/16:YOMIURI ONLINE)
厚労省によると、男性はフィリピン滞在中の8月末、野良犬に手をかまれ、11月1日に帰国。9日に風邪のような症状が出て、京都市内の病院を受診。
その後、幻覚症状、水や風を怖がるなど狂犬病特有の症状が出た。国立感染症研究所が調べたところ、男性の唾液(だえき)から狂犬病ウイルスが見つかった。
この方は11月17日に亡くなってます。

2例目
比国で犬にかまれた男性が狂犬病発症、国内2例目(2006/11/22:YOMIURI ONLINE)
同省によると、男性は約2年前からフィリピンのマニラ近郊に滞在しており、今年8月、右手首を飼い犬にかまれた。
男性は10月22日に一時帰国し、今月15日に風邪のような症状が出て、19日に横浜市内の病院を受診。いったん帰宅したが、その後、水や風を怖がり、呼吸困難を起こすなど、狂犬病特有の症状が出た。国立感染症研究所が調べたところ、唾液(だえき)から狂犬病ウイルスが見つかった。

フィリピンでは、年間250人前後が発症。世界保健機関(WHO)の推計では、狂犬病による死者は世界で年間約5万5000人に上り、インド、中国などで特に多い。
この方は重体ですが発症した時点で致死率100%なので、時間の問題だと思います。


この1例目のニュースを聞いてまず私が驚いたのは、「フィリピンで犬に咬まれたのに狂犬病の対策をしてないなんて、一体全体どういう事なんだ?」でした。はっきり言って、海外で犬に咬まれたらまず狂犬病の心配をしろというのは常識だと思っていたわけなんですが、一般の認識としてはそうじゃなかった様です。この二人の男性ですが、どちらも単純な短期の観光旅行ではなく、フィリピンに長期間滞在している。日本と違い東南アジアでは当然、様々な感染症に注意しないといけないわけで、何に注意すべきかを調べたら当然、狂犬病は上がってくる疾患名なんですが(2つ目の記事にある様に、フィリピンでは年間約250人の死者が出ている)、不幸な事にこのお二人はご存知無かった様です。咬まれた傷があまりひどくなかったんでしょうか? 傷が深ければ化膿する可能性もあり、現地の病院で抗生物質を射ってもらったりする可能性があり、そういう場合はその病院で狂犬病対策をする様に教えてもらえた可能性があるんですが、フィリピンの病院がどの程度なのかはわかりませんが、多分、そういう機会が無かったんでしょう。それと、2例目の男性の場合は飼い犬からの感染なわけですが、犬の場合、発症の2,3日前からウイルスが唾液中に排出される様になり、発症後1週間程度で死亡します。死ぬまでにはかなりの異常行動が見られるはずなので、それに気付かなかったとも思えないんですが、情報が無いのでなんともわかりません。
今となっては手遅れなわけなんですが、狂犬病は感染した動物に咬まれた後でもワクチン接種によって治療が可能なので、今回の事はとても不運な事だったと思います。

この狂犬病、狂犬病ウイルスによって起こる病気です。おそらく哺乳類の全ての種に感染するものと思われます。犬、キツネ、アライグマ、ネコ、牛、ジャッカル、オオカミなど大概の動物、そしてもちろん人は発症して死にますが、コウモリやネズミについては死なない奴もいる様です。感染動物の唾液中にウイルスが排出されるので、主に感染動物に咬まれる事で感染しますが、コウモリ洞窟でエアロゾルを吸った研究者が発症した事例や、ワクチン製造中にエアロゾルを吸い込んで発症した事例もあるので、呼吸器からの感染もあります。また、母ヤギに実験的にウイルスを感染させたら乳を飲んだ子ヤギに感染したり、経口生ワクチンが実用化されている様に、経口感染もあります。他に、原因不明で死んだ人の角膜移植を行ったら狂犬病を発症したりなど、移植による感染の事例も複数ありますが、これはあまり一般的ではありません。やはり主な感染経路は動物による受傷、咬傷となります。

WHOの推定によると世界の狂犬病による死者数は2004年で5万5千人(アジア3万1千人、アフリカ2万4千人)。他、1000万人が曝露後の措置(咬まれた人などウイルス感染が疑われて措置された人の数)を受けているそうです。これ毎年ですよ、毎年。すごい話ですよ! このほとんどが犬から感染しています。前に調べたらインドの死者数は年に3万人、中国は2500人くらいでした。数が段違いなのは市中の犬の数や曝露後の措置の違いなのかな? それとも中国は数をごまかしてるんだろうか?(笑) つい先日、中国では死者数が増えちゃったのでオリンピックに向けてとにかく犬を処分しちまえと飼い犬を含めて乱暴な犬処分をやっちゃって物議をかもしてましたね。他の動物としては、最近報告を見かけた事があるのはロシアのキツネ、北米のアライグマやキツネ、南米での吸血コウモリ、イギリスやアメリカでのコウモリなどですね。これらは犬に比べると断然、数が少ないですが、リスクとしては厳然と存在しています。

んで、日本国内なんですが日本では1957年以降、狂犬病は発生していません。これは狂犬病予防法により飼い犬へのワクチン接種を徹底した事、日本が島国であるおかげで他から感染動物が持ち込まれる事が無かった事、タヌキやキツネなどの野生動物にこの病気が蔓延していなかった事などによるおかげです。島国ってのは感染症についてはほんとにアドバンテージが高い。随分と環境的に得してます。おかげでもう飼い犬に予防接種しなくてもいいじゃん、なんて人が多数いるわけですが、ロシア人が漁船に犬積んでたり、密輸でいろんな動物が持ち込まれる可能性があったりするんで、あまり警戒を緩めるのは得策ではありません。犬を飼ってたら、その犬が他の人に咬みつく可能性ってのは排除できない。そういう時のために、その犬の安全性を証明できる様、マナーとして、ワクチンの接種はきちんと受けておくべきでしょうね。あとはコウモリ。北米ではここ数年、コンスタントに数例の死者が出てるんですが、今のところ日本ではそういう報告はありません。私が知ってる範囲ではコウモリ研究者でコウモリに咬まれた事がある人って結構居るみたいなんで、そういう人達が発症してないって事は日本国内は大丈夫なんだろうなとか思ってます。まあ、咬まれない事に越したことはないですね。

長くなっちゃったんで続きはまた明日にします。明日は狂犬病ウイルスがどんなウイルスなのか? 咬まれたらどう措置すればいいのか? どうして咬まれた後でもワクチンが有効なのか? 致死率100%なのにアメリカで1例だけ救命例があった話、などしてみたいと思います。

参考
感染症の話:狂犬病(国立感染症研究所感染症情報センター)

Rabies(WHO)



■2006.11.8(水) カエルの種類を間違ってました
またまたお久しぶりです。一気に寒くなりましたね。非常に憂鬱です。寒がりなんですよ。嫌だなー。

ところで、「生きもの図鑑」の「ボルネオのカエル」なんですが、間違いがある事をメールで教えてもらいました。
下の写真のカエルなのですが、私は今までこれをホソウデナガカエル属のDring's Slender Litter Frog(Leptolalax dringi)にしちゃってました。





しかし、このカエル、正しくはナガレガエル属のRock Skipper(Staurois latopalmatus):キボシナガレガエルでございました。
サイトを見たcari katakさんという方がメールをくださったのですが、確かに、改めて「FROGS OF BORNEO」のDring's Slender Litter Frog(Leptolalax dringi)の項を見直してみたら・・・、そもそも吸盤が無い、全然違うカエルでした。うーん不覚!
(ところで、"cari katak"って日本語で"カエル探し"ですね。いいですねー。今度向こうで使ってみよう。)

cari katakさんによると、「FROGS OF BORNEO」のRock Skipperの写真はかなり変だという事だったので、「AMPHIBIANS & REPTILES of MOUNT KINABALU」で調べてみたら、なるほどー、確かに私が観察したのはRock Skipperの様でした。
「FROGS OF BORNEO」の写真の個体はものすごく黒っぽくて、しかも模様の白点が小さくて均一でした。私はダナムバレーでこの種を10個体は見てるんですが、そんな写真のカエルの様な模様の個体は全然、見ていません。うーん、フィールドガイドなんですが、写真が1点のみというのはやはり、問題が出てくるんですね。
cari katakさん、教えていただいてありがとうございました。また、何かお気づきの点がありましたら、教えてやってくださいませ。


ところで、最後にボルネオに行ったのが2004年の夏。次は雨季のはじまりに行ってウォレストビガエルだぜー、と思っていたのですが、どうも11月は都合がつかない。今年もあきらめたんですが、どうにも楽しくないので、来年の2月あたりに行っちゃうかなー、とか画策してます。ダナムバレー以外にもう1箇所くらい検討してみるかなとか。最近、タイに何度か行ってて、あっちはあっちで鳥と哺乳類がすごく楽しいんですが、やはり、ボルネオでもっとカエルや他の生きものを見たいなーと思っているので、頑張って計画立てようかなとか思ってます。しかし、その前に、いろいろ整理しないといけないものが山積み・・・。ぼちぼちやれるといいなー(遠い目)。
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